個人売買で買った車がすぐ故障…修理費は売主に請求できる?【オーストラリア】

個人売買(プライベートセール)で中古車を購入しました。
ところが購入後すぐに故障が見つかり、売主に修理費を払ってほしいと伝えたところ、「個人売買だから責任はない。修理費は請求できない」と言われてしまいました。
本当に泣き寝入りするしかないのでしょうか?
オーストラリアでは、FacebookマーケットプレイスやGumtreeなどを通じた車の個人売買がとても身近です。
その分、「買った直後に壊れた」「売主に連絡しても取り合ってもらえない」というご相談は、JACSに寄せられるトラブルの中でも特に多いもののひとつです。
- 個人売買で買った車の修理費を、売主に請求できるかどうかの「原則」
- 例外的に請求できる可能性がある4つのケース
- 今すぐやるべきことと、解決しない場合の手続きの選択肢
結論:個人売買では原則、修理費の請求は難しい
最初に結論からお伝えします。オーストラリアの個人売買では、購入後に見つかった故障の修理費を売主に請求することは、原則として難しいのが実情です。
理由は、オーストラリア消費者法(ACL:Australian Consumer Law)の仕組みにあります。
ACLには「消費者保証(Consumer Guarantees)」という強力な保護制度があり、車が「許容できる品質であること」「説明どおりであること」などが法律で自動的に保証されます。
しかしこの消費者保証が適用されるのは、ディーラーなどの事業者から購入した場合です。個人間の売買(プライベートセール)は対象外とされています。

個人売買は英語で「Buyer beware(買主の自己責任)」と表現されることもあり、車は基本的に「現状渡し(as is)」で取引されたものと扱われます。
売主の「個人売買だから責任はない」という言い分は、残念ながら原則論としては間違っていないのです。
ひとつだけ例外的に個人売買にも適用される保証があります。それは「クリアタイトル(売主が正当な所有者であり、ローン残債などが付いていないこと)」の保証です。
ただしこれは所有権に関する保証であって、車の品質や故障をカバーするものではありません。
| ディーラーから購入 | 個人売買 | |
|---|---|---|
| ACLの消費者保証 | 適用される | 適用されない |
| 法定保証 | 条件を満たせば付く(州・年式・走行距離による) | 付かない |
| 所有権・残債なしの保証 | あり | あり(これだけは個人売買にも適用) |
| 故障時の修理・返金請求 | 法律に基づき請求できる | 原則できない(例外あり) |
ただし、例外的に請求できる可能性がある4つのケース
「原則難しい」とはいえ、すべてのケースで泣き寝入りというわけではありません。
次のような事情がある場合は、契約上の責任や不実表示(misrepresentation)を理由に、修理費や返金を求めて争える可能性があります。

ケース1:売主が事実と異なる説明をしていた
「エンジンに問題はない」「事故歴はない」「故障したことは一度もない」
売主がこうした具体的な説明を積極的にしていて、それが事実と異なっていた場合は、不実表示(misrepresentation)として契約の取消しや損害の賠償を求められる可能性があります。
ポイントは「売主が積極的にウソの説明をしたか」です。
単に「聞かれなかったから言わなかった」というだけでは認められにくく、メッセージや広告文など、説明の証拠が残っているかが勝負の分かれ目になります。
なお、隠れた重大な欠陥を知りながら意図的に隠していた場合も、争える余地があります。
ケース2:広告や契約書の記載と実態が違う
GumtreeやFacebookの広告に「整備記録完備」「走行距離◯◯km」と書かれていたのに実際は違った、走行距離計が巻き戻されていた、といったケースです。
広告の記載は売買の前提となった条件と評価され得るため、掲載時の広告のスクリーンショットが極めて重要な証拠になります。
広告は売買成立後に削除されてしまうことが多いので、今すぐ保存してください。
ケース3:ロードワーシー証明書(RWC/Safety Certificate)に問題がある
州によっては、個人売買でも売主がロードワーシー証明書(VICではRWC、QLDではSafety Certificateなど)を用意する義務があります。
証明書なしで売買された、あるいは証明書に記載された検査内容と車の状態が明らかに食い違う場合は、売主や検査を行った業者の責任を問える可能性があります。
証明書の要否や有効期間は州によって異なるため、お住まいの州のルールを確認しましょう。
ケース4:売主が「個人を装った業者」だった
頻繁に車を仕入れては転売している、いわゆる「無免許ディーラー」が個人のふりをして販売しているケースがあります。
実態として事業として売買している相手であれば、消費者保証の適用を主張できる余地が出てきます。
売主の名前で他にも多数の車の広告が出ていないか、検索して確認してみてください。
年間の販売台数が一定数を超えるとディーラー免許が必要になるなど、基準は州ごとに定められています。
4つのケースに共通するのは「証拠がすべて」ということ。やり取りの記録・広告・書類が残っているかどうかで、交渉できるかが決まります。
今すぐやるべきこと【5ステップ】

メッセージ、メール、通話の日時メモ、そして売買時の広告のスクリーンショット。広告は削除される前に必ず保存します。
故障の内容・原因・修理見積もりをレポートとして書面で受け取ります。「購入前から存在していた可能性が高い不具合か」を整備士に確認できると、さらに有力な材料になります。
契約書(あれば)、領収書や送金記録、名義変更(transfer)書類、ロードワーシー証明書など、売買に関わる書類を一式まとめます。
感情的な口頭のやり取りではなく、メールや手紙で「いつ・何を・いくら求めるのか」を期限付きで伝えます。記録に残る形であることが重要です。
州の紛争解決機関(トライビュナル)や裁判所の少額請求手続きという選択肢があります。詳しくは次の章で解説します。
解決しないときは:州の紛争解決機関(トライビュナル)という選択肢
売主が話し合いに応じない場合でも、いきなり弁護士費用のかかる裁判をする必要はありません。
オーストラリアには、少額・低コストで紛争を申し立てられる州ごとのトライビュナル(行政審判所)や裁判所の少額請求手続きがあります。
申立て費用は比較的安く、弁護士なしで本人が手続きできるよう設計されています。
ただし、個人売買のトラブルをどの機関が扱うか(トライビュナルか、裁判所の少額請求部門か)は州や請求内容によって異なります。主な機関は次のとおりです。
▼ NSW(シドニーなど)
NCAT(NSW Civil and Administrative Tribunal)や地方裁判所(Local Court)の少額請求部門が窓口になります。個人間の契約トラブルは少額請求部門の扱いになるのが一般的です。
▼ VIC(メルボルンなど)
VCAT(Victorian Civil and Administrative Tribunal)が民事紛争を幅広く扱っています。
▼ QLD(ブリスベン・ゴールドコーストなど)
QCAT(Queensland Civil and Administrative Tribunal)の少額民事紛争(Minor Civil Disputes)や治安判事裁判所(Magistrates Court)が窓口です。個人売買の扱いは請求の組み立て方によって変わるため、事前確認をおすすめします。
▼ その他の州・準州
WAでは治安判事裁判所の少額請求手続き、SA・ACT・NT・TASにもそれぞれ同様の機関・手続きがあります。各州の消費者保護当局(Consumer Affairs / Fair Trading)に問い合わせると案内してもらえます。
これから個人売買で車を買う方へ:3つの予防策
個人売買は価格面で魅力がある一方、保護が薄い取引です。次の3つだけは必ず実行してください。
- PPSRチェック(数ドル):ローン残債・盗難記録・全損(write-off)歴をオンラインで確認できます。残債付きの車を買うと、最悪の場合車を引き揚げられるリスクがあります。
- 購入前点検(Pre-Purchase Inspection):整備士による第三者点検を購入前に受けます。数百ドルの費用で、数千ドルの修理費リスクを避けられます。売主が点検を嫌がる場合、それ自体が危険信号です。
- 広告・やり取り・領収書の保存:売買が無事に終わるまで(できればその後も)、広告のスクリーンショットとメッセージ履歴は消さずに残しておきます。
よくある質問
- 購入から数日以内なら返品・キャンセルできますか?
-
個人売買にクーリングオフ制度はありません。
「買ってすぐだから返せる」という仕組みは個人売買には存在せず、引き渡しが済んだ時点で取引は完了したものと扱われます。
返金を求めるには、本文で紹介した「例外ケース」に当たることを示す必要があります。
- 売主は口頭で「3か月は保証する」と言っていました。有効ですか?
-
口頭の約束も契約内容の一部になり得ますが、問題は「言った・言わない」の証明です。
メッセージに残っていれば有力な材料になります。
録音やメモ、立会人の証言なども補強になりますが、口約束だけでは交渉が難航しやすいのが現実です。
- 売主と連絡が取れなくなりました。どうすればいいですか?
-
まずはメッセージ・電話・郵送など複数の手段で記録に残る形の連絡を試みてください。
名義変更書類に記載された住所が手がかりになることもあります。
連絡が付かないままでもトライビュナル等への申立ては検討できますが、相手の特定が必要になるため、売買時の情報(氏名・住所・車両情報)をできるだけ集めておくことが重要です。
まとめ:証拠を集めて、一人で抱え込まずにご相談を
- 個人売買はACLの消費者保証の対象外。修理費の請求は原則として難しい
- ただし「虚偽の説明」「広告と実態の食い違い」「証明書の問題」「業者まがいの売主」なら争える可能性がある
- 勝負を分けるのは証拠。広告とやり取りの保存、整備工場の診断書を今すぐ確保する
ご自身のケースが「例外」に当たるかどうかは、状況によって判断が分かれます。あきらめる前に、まずは状況をお聞かせください。

一人で抱え込まず、まずはお話をお聞かせください。状況を整理するだけでも、取れる選択肢が見えてきます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。制度や法律は州により異なり、変更されることがあります。個別の状況については、JACSまたは各州の消費者保護当局・専門家にご相談ください。
